「自社のプロジェクトにアジャイル開発は適しているの?」
新しい開発方式を取り入れたり既存のプロジェクトへ適応させたりする際に、アジャイル開発を採用すべきか悩む方も多いでしょう。
アジャイル開発の全体像を理解していないと、導入するべきかどうかの判断ができず、失敗につながる可能性があります。
そこで今回は、アジャイルソフトウェア開発宣言の概要から、アジャイル開発に向いている開発について詳しく解説します。
アジャイルソフトウェア開発宣言とは?
アジャイルソフトウェア開発宣言は、独自の手法でソフトウェア開発に取り組んでいた17名の開発者によって2001年に公開された宣言です。
宣言のなかには、開発者たちがソフトウェア開発に必要なマインドセットをまとめたものが記載されています。
具体的には以下の2点で構成されています。
- ソフトウェア開発の4つの価値
- 12の原則(アジャイル宣言の背後にある原則)
それぞれの内容について詳しく解説します。
アジャイルソフトウェア開発宣言の4つの価値
ソフトウェア開発において、最善の開発方法を模索する過程で以下の4つを価値としています。
- 「プロセスやツール」よりも「個人と対話」
- 「包括的なドキュメント」よりも「動くソフトウェア」
- 「契約交渉」よりも「顧客との協調」
- 「計画に従うこと」よりも「変化への対応」
上記の4つは、それぞれ前者の事項にも価値があるとしながらも、後者の事項に、より高い価値を見出しています。
アジャイル宣言の背後にある原則【12の原則】
アジャイル宣言の背後にある12の原則は以下のとおりです。
1. 顧客満足を最優先し、価値のあるソフトウェアを早く継続的に提供する。
2. 要求の変更はたとえ開発の後期であっても歓迎する。
3. 動くソフトウェアを、2〜3週間から2〜3ヶ月というできるだけ短い時間間隔でリリースする。
4. ビジネス側の人と開発者は、プロジェクトを通して日々一緒に働かなければならない。
5. 意欲に満ちた人々を集めてプロジェクトを構成する。
6. 情報を伝えるもっとも効率的で効果的な方法はフェイス・トゥ・フェイスで話をすること。
7. 動くソフトウェアこそが進捗の最も重要な尺度。
8. アジャイル・プロセスは持続可能な開発を促進する。
9. 技術的卓越性と優れた設計に対する不断の注意が機敏さを高める。
10. シンプルさ(ムダなく作れる量を最大限にすること)が本質。
11. 最良のアーキテクチャ・要求・設計は、自己組織的なチームから生み出される。
12. チームがもっと効率を高めることができるかどうかを定期的に振り返り、自分たちのやり方を最適に調整する。
出典:アジャイル宣言の背後にある原則
12の原則では、アジャイル開発への姿勢や取り組み方といった行動規範や、理想的なスケジュールについて詳細に提示されています。
アジャイル開発について深く理解するためには欠かせない要素です。
アジャイル開発のメリット・デメリット
アジャイル開発にはメリットとデメリットが存在します。
開発システムに適した手法かどうかを判断するためには、メリット・デメリットを理解することが重要です。
アジャイル開発のメリット
アジャイル開発のメリットとして、以下の点が挙げられます。
- 柔軟な対応が可能
- 短いスパンでリリースできる
- フィードバックに対応しやすい
イテレーション(1〜4週間の短い開発単位)をくり返すアジャイル開発では、開発の過程で発生する修正や仕様変更に対応しやすい特徴があります。
短期間で開発することで顧客のフィードバックへ迅速に対応できるため、顧客満足の向上にもつながります。
アジャイル開発のメリットについては「アジャイル開発のメリットとは?変化に強い開発手法は」でも詳しく解説しているので、ぜひご確認ください。
アジャイル開発のデメリット
アジャイル開発のデメリットには、以下の点が挙げられます。
- 作業の進捗状況が把握しづらい
- 開発の方向性がブレやすい
アジャイル開発は、従来の開発手法のように最初の計画通りに進めるのではなく、機能やイテレーションごとに計画を立てます。
全体的な計画は抽象化して立てなければならないため、進捗状況の把握やスケジュール管理が難しいのが難点です。
仕様変更や修正に応じてイテレーションをくり返すことで、当初の開発の方向性がブレやすくなる点にも注意が必要です。
アジャイル開発の主な手法
アジャイル開発のフレームワークとして、以下の手法が挙げられます。
- スクラム
- カンバン
- XP(エクストリームプログラミング)
それぞれ詳しく解説します。
アジャイル開発の種類については「アジャイル開発の種類を5つの手法に分けて紹介!選ぶ際のポイントも解説」で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
スクラム
スクラムはアジャイル開発のフレームワークのひとつで、1〜4週間で設定される短い期間(スプリント)をくり返して開発を行う手法です。
少数精鋭で開発を進めるため、チームメンバー同士の連携やコミュニケーションを重視しています。
短期間でスプリントをくり返す手法であり、要件変更にも柔軟に対応できます。
問題点や改善点の早期発見が可能なこともスクラム開発の大きなメリットです。
アジャイル開発のスクラムに関しては「アジャイル開発にけるスクラムとは?基礎知識から他手法との違いを解説」で詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。
カンバン
カンバンは、ジャストインタイム方式で使用される生産指示票のことであり、タスクを視覚的に確認できる手法です。
プロジェクトチームごとにボードを使用して「未着手」「作業中」「作業終了」のように、段階ごとのタスクを管理します。
タスクを統一することにより、管理がしやすくなったりコミュニケーションが取りやすくなったりするのがメリットです。
元々はトヨタ自動車の生産システムとして使用されており、現在ではソフトウェアの開発をはじめビジネス全般で取り入れられています。
XP(エクストリームプログラミング)
XPは、要件や仕様変更を想定したうえで事前の綿密な計画は立てず、プロジェクトを進行しながら柔軟に対応していく手法です。
2人のプログラマーが協働してコードを書き込む「ペアプログラミング」を主要とし、バグなどの問題点を減らします。
迅速かつ柔軟にニーズへの対応が必要なプロジェクトに有用です。
顧客やパートナーとのコミュニケーションが多く発生するため、適切なコミュニケーションを図ることが重要です。
アジャイル開発が失敗する理由
メリットの多いアジャイル開発ですが、要因次第で失敗するリスクもあります。
アジャイル開発が失敗する主な理由は以下のとおりです。
- コミュニケーション不足
- 責任の所在が曖昧
- アジャイル開発への理解が不十分
- アジャイル開発の経験不足
- アジャイル開発に向いていないソフトウェアの開発
アジャイル開発ではチームや顧客とのコミュニケーションが重要であり、不十分な場合はミスリードを引き起こす原因になります。
プロダクトオーナーに決定権がないなど、責任の所在が曖昧な状態では機敏性を失い、クオリティの低下にもつながります。
要件や仕様変更への柔軟な対応が求められるため、チームメンバーはアジャイル開発への理解や経験が必要です。
そもそもアジャイル開発とは何かを理解できていなかったり、経験不足のメンバーが多かったりするチームは失敗しやすいでしょう。
また、開発するソフトやアプリによってはアジャイル開発に向かないものもあります。
アジャイル開発の失敗理由については「アジャイル開発が失敗する5つの理由と事例を解説!成功させるためのポイントも紹介」でも詳しく解説しているので、気になる方は以下の記事も参考にしてください。
アジャイル開発の向き不向き
アジャイル開発を失敗させないためには、向いている開発と向いていない開発を理解することが重要です。
アジャイル開発に向いているプロジェクトには、以下が挙げられます。
- 途中で仕様変更が予想される
- 要件の全体像が明確になっていない
- クライアントがプロジェクトの参画に積極的
開発を進める過程でイテレーションごとに要件を決めていく手法であるため、要件が固まっていないほうが柔軟に対応できます。
クライアントとの関わりが多い点もアジャイル開発の特徴であり、積極的にチームとして参画してもらうことでより迅速な対応が可能です。
一方で、アジャイル開発に向いていないプロジェクトは以下のとおりです。
- 要件が明確であり、仕様変更を必要としない
- アジャイル開発に対するチームメンバーの理解や経験が乏しい
- クライアントからの要求が少ない
最初の段階で要件や全体像が明確なプロジェクトでは、くり返されるイテレーションによって方向性がブレる可能性が高いです。
従来のウォーターフォール型とは大きく異なるプロセスで開発を進めるため、知識や経験が乏しいメンバーが多いと失敗のリスクも高くなります。
クライアントからの要望やフィードバックに応じて短期間で開発を進めるため、クライアントの参画がなければ得られるメリットも半減します。
アジャイル開発の流れ
アジャイル開発では、主に以下の流れで進めていきます。
- 要件定義とリリース計画の策定
- プロダクトバックログの作成
- イテレーションの繰り返し
それぞれ詳しく解説します。
要件定義とリリース計画の策定
要件定義は、プログラムやアプリケーションを作成する前に必要な機能や要望などをまとめてタスクを明確にするプロセスのことです。
リリース計画では、成果物をいつまでに作成しリリースするのかを決めます。
イテレーションをくり返すアジャイル開発の場合は、途中で変更することを前提とするため、明確に策定する必要はありません。
一方で要件定義が不要であると誤解されがちですが、要件定義が定まっていないと開発の方向性がブレやすく、クオリティの低下につながります。
アジャイル開発の要件定義については「アジャイル開発は「要件定義が不要」は誤解!必要性やユーザーストーリーとの違いについて解説」で詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。
プロダクトバックログの作成
プロダクトバックログとは、プロジェクトや製品開発に必要なタスク項目に優先順位をつけてリスト化するです。
優先順位にもとづいてプロダクトバックログを作成することで、チームがやるべき作業を明確化できます。
取り入れる項目にはユーザーストーリーや技術的負債、バグの修正などが挙げられ、開発途中で内容が変更することもあります。
プロダクトバックログをチーム全体で管理・運用することで目標地点を共有でき、仕様変更や思わぬトラブルにも柔軟に対応できるのがメリットです。
イテレーションの繰り返し
イテレーションとは、1〜4週間程度で設定される短い開発単位のことです。
アジャイル開発では、イテレーションをくり返すことで、フィードバックに迅速かつ柔軟に対応できます。
また、実際に動く成果物を早期に確認できるため、クライアントの満足度の向上にもつながります。
まとめ
アジャイルソフトウェア開発宣言はソフトウェア開発におけるマインドセットをまとめたもので、「4つの価値」と「12の原則」で構成されています。アジャイル開発で重視すべき価値観や行動規範を明確にしたものであり、根幹を理解するために欠かせません。
また、プロジェクトによっては、アジャイル開発に対する向き・不向きがあります。
要件が明確なプロジェクトやチームメンバーの理解・経験が乏しい場合には、方向性のブレやクオリティの低下につながります。
アジャイル開発に失敗しないためには経験豊富なチーム編成をし、必要に応じて柔軟に対応できる要件で開発を進めましょう。
アジャイル開発はオフショア開発と併用して行うことで、コストを抑えながら高品質な開発が可能です。
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